春のノート [春:たけのこ(筍)]
*お知らせ:当会から、回想法の本が出版されました。詳しくは右欄の「出版のお知らせ」をご覧ください。 *このブログでは行替えが不自然になる場合があります。パソコンのブラウザが新しいMicrosoft Edgeの場合です。他のブラウザでも生じる場合がありますが、内容は変わりませんのでご了解ください。
<テーマの目的>
テーマ:たけのこ(筍)
目 的:今の季節、筍(たけのこ)が旬(しゅん)である。その筍は「竹の子」から、
竹に育ち、いろいろな生活用品となって人間の役に立ち、炭(竹炭)になっ
ても役に立っている。そうした竹の一生と私たちのこれまでの人生と、関連
しながら思い出を語っていただく。
<実施日と参加者> 実施日:4月初旬
場 所:グループホーム(デイサービス併設) 実施者:リーダー1名、コ・リーダー6名、施設スタッフ1名
参加者:6名(90才台女性5名、80才台女性1名、要介護2~4)
<参加者への配慮>
・お元気だが遠慮気味の方は、リーダーが意識的に指名し、コ・リーダーはその方が発言
しやすいようにサポートする。
・お元気な方でも、聞いている(聞こえている)ように見えても、そうでない時があるの
で、集中していただけるように、話題に沿った問いかけを適宜行う
・不安感が強くなる方の場合は、ご様子を見ながら声かけを行い、安心して発言しやすい
ようにサポートする。
・聴くことは可能だが、発語が難しい方は、コ・リーダーが代弁しながら話題に参加して
いただく。
・片側のみ、かろうじて聞くことが可能な方には、コ・リーダーが聞こえる側に座り、
耳元で話題を伝えてゆく。場合によっては筆談によりコミュニケーションをとることも
行う。
<進行予定>
1)簡単な自己紹介
2)筍を植えた箱(2個)を出す。
・筍を採った経験、採り方について話していただく。
・筍の皮の剥き方、切り方、の話では、実際にやっていただく。
・筍の調理法について話していただく。
・茹でておいた筍を、少し食べてもらう。
3)竹の一生を、人間の生活との関係で話題にしていく。
①筍(竹の誕生)→筍採りの話に
②「竹とんぼ」、「水鉄砲」→子供の頃に遊んだ話に。
③「竹駕籠(かご)」は農作業や炊事に使った生活必需品、「竹尺(竹製物差し)」で 着物を縫い、「花入れ」には花を生けることもあれば「水差し」としても使った。
竹は人間生活全般の便利な道具として役に立っていた。
④最後に「竹炭」を出す。→竹を利用する最終の利用形態。
・竹炭は消臭や水の浄化に使われる。黒こげの姿になっても、人間生活に役立ってい
るのは立派。人間の方もそれぞれの年代に応じて役割があり、お役にたっているこ
とを確認していただく。
⑤実際の流れは、このような順番にはならないので、その時々の発言内容に沿っていく
が、話の区切り毎に「竹の一生」と「人間の一生」を重ねるようにまとめていく。
<用意した道具>
1)段ボール箱に土を入れ、細かく切った藁(わら)を敷き、中に筍の大きなものは2つ、
中くらいと小さなものを幾つか混ぜて、顔を出すように埋めて、「竹林の中で、枯葉
をかき分けて生えた筍」の雰囲気になるようにする。(箱は、2つに分けて)
(このページの写真は、その上をクリックすると、拡大して見ることができます)
2)軍手も2組用意。皆さんに、軍手をはめてかき分けてもらうため。
3)竹で作った生活用具類
・竹駕籠(平型、取っ手付きを各1個) 、物差し(竹製)
(可能なら、竹トンボ3個、水鉄砲、竹笛、竹製団扇等、賑やかに)
4)花入れ(竹製)
5)竹炭
6)梅干し(竹皮に包んで嘗めるため、人数分くらい)
<実際の進行>
リーダー:では、お話会を始めましょう。
→開始を告げてから、室外に用意した布をかけた大きな箱を持って入ってくる。
リーダー:「これは何でしょうか?」と机に置く。 皆さん :何だろう?と、わいわいがやがや。⇑クリックすると拡大
リーダー:おもむろに布を取る。
→大きな筍は、見た目の迫力は満点。
皆さん :歓声、すごい、などの歓声。
リーダー:今日は、筍のお話です。
:筍を煮てきました。皆さん、一口ずつ食べてください。
→コ・リーダーが、各人に小皿で配る。
→ひとしきり,「美味しい」,「少し苦い」,「柔らかい」
「味付けが薄い」、「いや美味しい」、「硬い」など、 わいわい、やがやしながら食べる。
リーダー:筍を採ったことがありますか? (リックすると拡大⇓)
Eさん :あるよ。家に生えてきたので、採った。
リーダー:Aさんはどうですか?
→自分で何度か採った経験のある参加者は、Aさん、コ・リーダー②、
1回だけあったのはコ・リーダー④、
→他の参加者は、食べたことはあるが、採ったことはない。
*皆さんに、一通り、経験の有無を聞く。
リーダー:では、筍を掘ったことのあるAさんに、実際に掘ってもらいましょう。
→筍の生えた箱をAさんの前に置き、軍手をはめてもらい、実際に藁と土をかき
分けて、筍を採ってもらう。
→軍手に少し泥が付いて、リアルである。
リーダー:生の筍を、お刺身で食べたことはありますか?
Eさん :ないよ。煮て食べたよ。
リーダー:他の方はいかがですか?
→筍を生で食べたことがない人が多かったが、Aさんとコ・リーダー③は、刺身
のようにお醤油を付けて食べたことあり。美味しかった。
→筍の刺身はお酒に合いそう、という意見もあり。
リーダー:では、今から、この掘った筍をむいて、お刺身にして、皆で食べましょう。
では、むきます。Eさん、どうむけばいいんですか?
Eさん :まず頭を落とし、それから皮を切る。
リーダー:洗ってきたた筍をまな板の上で切ろうとする。
→皮が固くて、なかなか切れない。 Eさん :皮は固いよ。
→「力が足りない」等々のやりとりがあって、やっと頭の部分をおとす。
→リーダーが、皮を一枚づつ向こうとすると、
Eさん :そんなんじゃダメ。まず、切れ目を入れて、それから両手で開いて、一気に
むくの。
→切れ目を入れるにも、コツがあるらしく。リーダーは苦労。
→やっと切れ目を入れ、皮を一枚一枚むく。
Eさん :ちょっと貸してみて。
→Eさんが切り口に親指を入れて一気に開くと、全部の皮がさっとむける。
Eさん :剥いたら、包丁の背で刮(こそ)いで、表面を綺麗にする。
→リーダーは教えどおり刮(こそ)いで、綺麗に。
リーダー:はい、できました。ではこれを刺身にしますが、どなたか食べる方?
:まず、Eさん、いかがですか?
Eさん :生は食べない。煮ないと食べない。
→「生を食べる人はジャンケンで決めましょう」の声。
→皆さん、生は食べたくないと思っているらしい。「何か罰ゲームでも」などの
意見があって、結局、Aさん、コ・リーダー①、③は食べる。
→「少し苦いが、淡泊で美味しい」という感想も。
コ・リーダー④:筍にはどんな栄養があるんですか?筍を食べると、体に良いのですか?
→「栄養はあまりないのでは」、「分からない」、「お通じが良くなる」、
「竹みたいに背が高くなる」などの意見あり。
→「生の筍を食べていると、犬が散歩の時に草を食べている気分がわかるように
思う」の意見あり。
→「腸の働きが良くなるのでは」の意見があり。
→「あー、そう」の相づちの代わりに「あー、ちょうー」といって笑いに。
→「あー、ちょうー」と皆で合唱して、次の話題に。
リーダー:竹は生まれてすぐに、私たち人間の役に立っているのですね。
:では、これは何かに使いましたか?
→むいた筍の皮を出す。むいたばかりの皮は白くて柔らかい。
→「やわらかい皮に梅干しをはさんでしゃぶった」,「けっこう美味しかった」
など、ワイワイガヤガヤ。
→コ・リーダーが梅干しを出して、皮に包み、全員に配る。
→「美味しい」、「しょっぱい」などの意見あり。梅干しが皮からはみ出して
しょっぱい顔の人が数名。
Aさん :私は、お味噌を入れて食べた。
→味噌を入れたのはAさんのみであった。美味しいとのこと。
Aさん :その白い皮をきざんで、おやつで食べた。
→皆、一様にびっくり。皮の方を食べたことがあるのはAさんのみ。
リーダー:どんなふうに食べたのですか?
→「千切りにした」とのことなので、リーダーが、Aさんの言うとおりに、千切
りにする。
→「皮の赤くない白いところを、醤油を付けて食べた」とのことなので、試して
みる。
→皆さんが食べる。それほど苦くはない。風味あり。
リーダー:皮も役に立って、竹の子も役に立って、すごいですね。Dさんはこうして皮を
千切りにして食べましたか?
(Dさんは、質問に答えようとするが、なかなか言葉が出てこない。隣のコ・リーダー③
が、唇の動きから、「食べたことないですよね?」と問いかけると、Dさんはうなずき、
さらに何かお話する。その表情から、「美味しそうじゃないですよね?」とコ・リーダー③が聞くと、Dさんは笑いながら大きくうなずく)
コ・リーダー③:ハーイ(と挙手)
:Dさんは「食べたことはない。美味しそうでもない」と言っております。
リーダー:分かりました。皆さん。Dさんは「生の皮は食べたことがなく、美味しそう
でもない」とおっしゃってます。
:こうして皮を千切りにして食べた方、どなたかいらっしゃいますか?
Eさん :生では食べなかったよ。筍は家に竹が無かったので、もらって植えた。
:そうしたら、隣の家にも筍が生えてきて、道をはさんだ土手にも、毎年のよう
に生えてきて、それを採った。 →「そうか、地下で茎が伸びるんだ」、「地震の時は竹林に逃げろ、と言います
からね」、
→「土手の筍は他の人に採られないように囲いなどしましたか?しないよ」など
のやりとりあり。 リーダー:では、赤ちゃん時代の筍のお話はこのくらいにして、この筍が
大きくなると、どうなりますか?
→「その筍は太いから孟宗竹」、「家の近くは細い竹が多い」
「真竹はまた違う」などのやりとりあり。
リーダー:これはどう使ったのですか?と孟宗竹を切った花瓶を出す。
→「それは花を入れる」「グラジオラスを活けた」の発言あり。
→花瓶の役割で一致。
*用意した竹トンボ、物差し(竹製)、竹笛、竹製籠など、それぞれ手に取って
て、にぎやかに雑談。いろいろと役に立っている、と実感。
Eさん :真竹(まだけ)は細く割いてベトコンを作った。
→ベトコンの言葉に一同驚く。「ベトコンとは何?」と一同。
Eさん :こうして曲げて、地面に刺してその上にビニールを被せる。
→「ビニールハウスだ」、「小さな背の低いビニールハウス」
「蒲鉾型にするんだ」「確かに見たことある」の発言あり。
リーダー:竹の物差しを見せ、それを曲げながら、
→「竹は細く割いても、こんなに曲がるんだ」とやってみる。
Eさん :そのべトコンの中に野菜を植える。大根や蕪を蒔(ま)いたりして植える。
→「ほうれん草も植える?」、「いや、ほうれん草は植えない」、「寒さに弱い
野菜だけ入れるんだ」、などのやりとりあり。
Eさん :ベトコンは、天気が良くて暖かいと、中が熱くなりすぎて、野菜が枯れてしま
うので、昼間は開けておき、夜は閉じておく。
→「風を入れるんだ」,「農家の手間も大変だ」などのやりとり
あり。
リーダー:Eさんは誰とそのベトコンを作ったのですか?
Eさん :3人でやった。
リーダー:3人って誰ですか?
Eさん :倅(せがれ)と嫁と私。 (注「せがれ」は「むすこ」のこと)
→「倅と嫁とEさんの3人」か。Eさんたち3人で頑張っている様子が思い出し
ますね。などのやりとりあり。
リーダー:Aさんも、ベトコンは作りましたか?
Aさん :うちもビニールで作ったよ。
→Aさんは、旦那さん、お嫁さんの3人で作ったとのこと。
リーダー:「これはどう使いますか?」と平たい笊(ざる)と柄付きの駕籠(かご)。
Eさん :その平たい笊(ざる)で、落花生を篩(ふる)った。
→「落花生のゴミを取るんだ」、「重かったでしょう」、「いや重くない」
「その笊一杯をふるうと10円貰った」、「子供の頃のお手伝いのお小 遣い
だったんだ」、などのやりとりあり。
Cさん : そんな駕籠(かご)は、自分で編んだ。
リーダー: 皆さん、Cさんはご自分で竹を編んだんだそうです。それはすごい。手間が
大変でしょう。
→「いや、そうでもない。長く座っているのでお尻が痛かった」などのやりとり
あり(一同笑)
リーダー:「これは何ですか?」と竹の物差しを見せる。
→「ものさしし」の答え。「鯨尺(くじらじゃく)だ」の答えも。
→「着物を縫うときに鯨尺を使った」,「尺だけなくセンチもある」
などのやりとりあり。
→「私は、姿勢が悪いと背中に物差しを入れられた」の答えに爆笑。
→「自分も背中に入れた」人が何人かいた。
リーダー;これ、熊手もどき。これは何に使ったかな?
→ミニチュアのものなので、「小さい」、「可愛い」などの声。
→庭の枯葉や、畑の草を集めるのに使った。。
→参加者に、実際に熊手を持って、身ぶり、手振りで使い方を説明して
もらう。
→「酉の市では、小さな熊手も飾って売っているね」,「縁起物で商売
繁盛だ」、「お金をかき集めるんだ」などのやりとりあり。
Aさん :その熊手は作ったよ、と発言。
リーダー:えーどうやって作ったの。
Aさん :火であぶって曲げた。
→皆、すごい、と感心。
リーダー:竹トンボはやったことはありますか?
Cさん :私はやったことないね。
→コ・リーダー⑤、コ・リーダー②が、竹トンボを飛ばす。
*何回かデモ飛行。
コ・リーダー⑤:竹トンボはけっこう良く飛びますね。
*「この年齢でやっても、けっこう面白いですね」、「女の子はやらなかった」
「男の子が遊んでいた」などのやりとりあり。
リーダー:竹はいろいろと役に立ってますね。
→筍の時は食糧に、農業ではベトコンという小さな温室に、竹籠や物差しや、
花入れで生活用品に、熊手はお掃除に、竹はすごいですね、など、これま
での話を確認するやりとりあり。
リーダー:竹はいろいろと役になってますね。では、これはなんですか?
→竹炭を出す。
→最初は分からなかったが、すぐに「炭だ」の声。竹の形のまま黒い炭に。
*一片づつ回して手にとってもらう。
→「消臭剤に使う」、「水の浄化に入れている」、「家を立てるときに湿気
取りに床に敷いた」、「火鉢の炭に」、などのやりとりあり。
リーダー:筍、色々な竹製の生活用具、炭、を並べながら、
:こんな順番で、お役にたっているのですね。
:竹の一生は、最後に、炭になって身を焦がす。
:身を焦がしてまでお役に立って終わる、偉いですね。
→「考えてみればすごいですね」、「いろいろ役立っているね」など、やりとり
あり。
コ・リーダー③:竹のように、初めから終わりまで、炭になっても役に立つ、見習いたいです
ですね。
→竹のように真っ直ぐに生きなきゃ、年令相応に、やることがある、など、発言
あり。
リーダー:皆さんのように頑張らなくちゃ。Fさん、とりあえず、何する。何したい?
:では、とりあえず食べましょう。美味しい物を食べて元気になりましょう。
*では、美味しい筍を食べて、と「筍のチョコ」を出す。
<座直り>
・お茶、お菓子は桜色の最中、チョコの筍、等、食べながら、雑談。その中で竹に関する
ものを略記します。
・「竹の貯金箱」の話あり。
→竹の節から節まで細い切れ目を作り、そこから小銭を入れる。
壊さなければ開けられないので、お金が貯まる。
・大きな竹の背負い籠で、行商にでたおばさんがいた。あれも竹で編んだのも。
・背負い籠といえば、近所に「しょいかーご」という農産物の直販店があり大人気。
など。
<回想法を振り返って>
①筍から、道具類、炭まで、竹の一生を、一通り話題にできたのは良かった。
②丁度、筍の出回る季節で、大きいもの、小さいもの、色々と用意できて良かった。
(地元密着のスーパーで安く購入できた)
③実際の土と麦わらを用意できたのは良かった。(DIYで売っている)いかにも実際に
生えているような雰囲気で出せた。
*一番大きな筍は藁から30センチ以上は高く、威容といえるほど貫禄があり、
皆さんびっくり。非常にインパクトがあってよかった。
(大きい竹の子は、迫力満点。まず、コ・リーダーの方がびっくりした。)
④火吹き竹も用意したかったが、間に合わず残念。
→皆さんに吹いてもらうのも面白かったかも。
→吹き方のコツ、ご飯の炊き方、お風呂の火の付け方、など、お話が聞けたかも。
⑤竹駕籠は、もっと使い方や、生活の役に立っていたことを話してもらいたかった。
(時間がなかったので、はしょった)
⑦水鉄砲は、実際に水を入れて飛ばしてみれば良かったか?
(しかし、水をどの方向に飛ばす?室内では無理か)
⑧竹の子料理の話を考えていたが、そこまでは話が進まなかった。
⑨発語の困難な方は、思い通りに言葉にならずもどかしそうであったが、コ・リーダーを
介して、何回か発言していただくことができた。ご自分の意見が皆さんに注目されるこ
とで、表情も生き生きとしていた。
コ・リーダーの反省点としては、前半の時間にも、もっと積極的に、コ・リーダーが
挙手をしたり、アピールをして、発言をしていただければよかった。コ・リーダーとし
ては遠慮気味であった。 ⑩参加者は女性が多い(今回は全て女性)ので、顔馴染みとの井戸端会議のような雰囲気
で話してもらうよう心掛けているが、なんとか楽しくお話しできたように思う。
(リーダー 室井)