夏のノート [夏:梅雨]
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<テーマの目的>
テーマ:梅雨
目 的:梅雨の季節が間近ですので、梅雨時の暮らしぶりをお話いただきました。
昔は、冷蔵庫や洗濯機は一般家庭にはありませんでしたので、今の時代
とは違って、いろいろな生活の工夫が必要であったと思われます。
そうした苦労話についても思い出していただくきます。
<実施日と参加者> 実施日:6月中旬 場 所 :グループホーム(デイサービス併設)
実施者:リーダー1名、、コ・リーダー5名、施設スタッフ2名
参加者:8名(90才台女性5名、80才台女性2名、90才台男性1名、要介護2~4)
<参加者への配慮>
・関西弁で話すことを好まれる方には、関西で育ったコ・リーダーが側に座り、関西弁も
交えながらお話をするよう心掛ける。
・お元気だが遠慮気味の方は、リーダーが意識的に指名し、コ・リーダーはその方が発言
しやすいようにサポートする。
・お元気な方でも、聞いている(聞こえている)ように見えても、そうでない時があるの
で、集中していただけるように、話題に沿った問いかけを適宜行う
・不安感が強くなる方の場合は、ご様子を見ながら声かけを行い、安心して発言しやすい
ようにサポートする。
・聴くことは可能だが、発語が難しい方は、コ・リーダーが代弁しながら話題に参加して
いただく。
・片側のみ、かろうじて聞くことが可能な方には、コ・リーダーが聞こえる側に座り、
耳元で話題を伝えて、話題の進行に沿って発言していただけるようにサポートする。
・座位が保てない方はソファーに横になって参加していただく。発声が小さい場合が多い
ので、側に座っている施設スタッフが大きな声で代弁するように心がける。
<進行予定>
1)簡単な自己紹介
・自己紹介では「梅雨は好きか、嫌いか」とその理由を一つだけあげていただく。
2)梅雨に関する簡単なクイズを用意し、答えを考えていただきながら、集中力も高めて
いただく。
3)子供の頃の梅雨時の遊びについて。
・梅雨時の遊びについて、何処で、どのような遊びを、誰と遊んでのか、男の子と、
女の子の遊びの違い、などについて話していただく。
4)梅雨時の外出について。
・車の少なかった時代に、外出時の服装や傘、履き物などについて話していただく。
5)梅雨時の洗濯について ・梅雨時の洗濯のご苦労を話していただく。
→特に「干し方」は、それぞれのご家庭によって、いろいろな工夫をされたと思われる。
6)食べ物について
・梅雨時の料理を作る時の工夫と、冷蔵庫が一般の家にはなかった時代に、食べ物
の保存の注意や工夫について話していただく。
<用意した道具>
1)番傘
(写真の上をクリックすると、拡大して見ることができます)
→わらで編んだ草履は入手できなかった。
3)梅雨に関するクイズ ○梅雨 ○○梅雨 梅雨○○ 梅雨○
・上記の4枚のカード(A4)を、各2枚、手書きで作成(パソコンでの印字も可)
→1枚はリーダーが手にかざして見せながら説明し、もう1枚は、離れた席の方や、視力
が鮮明でない方は手に取り、眼前で見ていただくために用意。
・各質問の答えを書いたカード(A4)も、同様に各2枚。
(こちらは 空梅雨 のように答えを記入してある)
<実際の進行>
(以下、進行の概要を略記します)
リーダー:こんにちは、今日は良い天気ですね。窓から見える青空がきれいです。
:でも、もうすぐ梅雨の季節です。今日は梅雨についていろいろとお話していた
だきます。
:まず初め、皆さんに簡単な自己紹介していただきます。
:「梅雨が好きか嫌いか」を言っていただいてから、お名前をお願いします。
→「梅雨は好きでない」と言われる方が多い。
→「なんとなくうっとうしい」、「雨が嫌い」、「ジメジメするから」などの発言
あり。
*殆どの方が「梅雨は嫌い」と言われる中で、お一人だけ「雨が好きなので梅雨
が好き」という方は「なんとなく落ち着く。雨を眺めるのが好き」との発言。
リーダー:では、梅雨に関する「簡単なクイズ」がありますので、考えていただきます。
*以下のカードを1枚ずつ見せて、答えを聞いて行く。
→全員の方に発言していただけるように、また、ご自分の指名される順番が分か
る(予測できる)ように、座席順の通りに答えていただく。
→簡単そうで、なかなか答えが出ないので、皆さん集中して考える。
〇梅雨
→答えは「空梅雨(からつゆ)」。または「雨梅雨(あめつゆ)」も正解。
梅雨○〇
→答えは「梅雨明け(つゆあけ)」、または「梅雨入り(つゆいり)」。
○○梅雨
→答えは「菜種梅雨(なたねづゆ)」。「から梅雨」、「あめ梅雨」の平仮名は不正解。
梅雨○
→答えは「梅雨寒(つゆざむ)」、または「梅雨空(つゆぞら)」
*各問題とも、正解が一つの場合、もう一つも考えていただく。
(それぞれのクイズごとの個々のやり取りは省略)
リーダー:では、梅雨についての国語の問題が終わりましたので、お話に入りましょう。
:子どもの頃のことですが、梅雨の季節、皆さんの子供時代はどんな遊びをし
ていましたか?
→「外では遊ばなかった」
「友達が家に来て、家で一緒に遊んだ」
「友達の家に行って遊んだ」
→皆さん「室内で」とのこと。
リーダー:室内では、どんなことをして遊びましたか?
→「おままごと」、「おはじき」、「お手玉」など、女の子の好きだった遊びの
名があがる。「お人形さんに着せ替えて遊んだ」ことも。
→「かくれんぼ」はしたが、「鬼ごっこ」は家では叱られる。
→近所の友達が、何人か来て、一緒に遊んだ。
リーダー:一緒に遊んだお友達のお名前は覚えていますか。
→友達の名前は忘れている方が多い。
→Aさんは、お友達の名前を覚えていて「近所の〇〇ちゃんと△△ちゃん、学校
の近くの☆☆ちゃん」と名前をはっきりと言われる。
*Aさんが、子供時代のお友達のお名前をすらすらと言われたので、皆さん「よ
く覚えてますね」と感心。
→「顔は浮かぶが、名前が忘れた」、「もう忘れた」といわれる方が多い。
リーダー:雨でも外で遊びましたか。
→「雨の時は、外では遊ばなかった。家の中で遊んだ」という皆さんの中で、
Dさんは「外で遊んだ」とのこと。
(Dさんは大きな声が出せないので、隣のコ・リーダーがDさんのお話を皆に伝
える)
コ・リーダー① :はい、Dさんは雨の時でも、外で遊んだそうです。
リーダー:皆さん、Dさんは雨でも外で遊んだそうです。
コ・リーダー①:Dさんは、雨上がりに水たまりで、ばしゃばしゃするのが好きだったそう
です。
コ・リーダー :長靴でばしゃばしゃ、だそうです。
リーダー:雨のあがりの水たまりでバシャバシャ、楽しそうですね。
→ひとしきり、雨あがりの水たんまりで、バシャバシャ、の話題で盛り上がる。
リーダー:それでは、雨でも楽しくなるように、歌を歌いましょう。
→「あめふり」を歌う。
(「あめあめ ふれふれ かあさんが、じゃのめでお迎えうれしいな・・・」を歌
う)
リーダー:皆さんは雨の時の外出はどうしていましたか。
:こんな傘をさしていませんでしたか。
→番傘(ばんがさ)を出して開く。
→「それは番傘だ」、「いや蛇の目では」など、いろいろの意見あり。
*骨の細いのが、蛇の目。太いのが番傘,ということで皆さん何となく納得。
→傘を広げると、顔の色が傘の紙の色に染まって、綺麗に。
*皆さん、順番に傘をさして顔色を見てもらう。
*何気なく、コ・リーダーと参加者が一緒に傘に入る。
→「相合い傘だ」の声。
→なかなか良い雰囲気なので、記念写真を撮る。
(番傘は盛り上がる)
リーダー:皆さん、こんなものも履いていませんでしたか。
→藁草履(わらぞうり)を出す。
→この藁草履は、素材が「薄く剥いだ(はいだ)竹」で編んである。
→手触りで“藁(わら)”ではなく”竹草履”であることに気付き「これは竹だ
ね」というCさん。
リーダー:Cさん、これが藁ではなく竹でできていることに、よく気付きましたね。
→「手ざわりが違う」とのこと。
→素材が昔と違って竹に変わっていることに「時代が時代だから、藁(わら)な
んてないよ」という話に。
→しかし、皆さん、藁草履(わらぞうり)は「見たことはある」が自分で履いた
ことはない。
→子供の頃の”可愛い長靴”の思い出の話に。
リーダー:皆さんは、長靴の方を履かれていたようですね。
:子供の頃は、どんな長靴を履いていましたか。
:色は何色でしたか。赤?、ピンク?黒?
→女性は、赤色かピンクの長靴。
→長靴といっても、丈の短いタイプの長靴が多かった。
→下駄、ぽっくり、のように、足が濡れないものを履いて外出したことを思い出
す方も。
→高下駄(たかげた)を履いた、という思い出も。
リーダー:梅雨時は、洗濯はどうしていましたか。干すのが大変ですね。
→「軒下につるした」、「廊下に干した」の方が多い。
→「洗濯を干す部屋があった」という方も。
→農家の方は「土間に干した」とのこと。
→それぞれ、皆当時の家の状況に合わせて。
→洗濯機や乾燥機のような便利なものが、庶民の手に届かなかった時代には、い
ろいろと工夫と苦労があったようです。
リーダー:雨のときは、畑仕事はどうしてましたか。
*「雨の時は、農作業は休む」という方が多かった中で、Eさんの発言に注目が
集まる。
→「大雨のときは、畑仕事は休みだけど、少し雨が降った方が、草刈りにはよい」
「濡れていたほうが、鎌が切れるようになる」とのこと。
→農家での現役時代、経験されていた”雨と鎌の切れ味”の関係を鮮明に思い出
されたご様子。
*ご自分から目を輝かせて発言。
→皆さん、一様に感心。
リーダー:梅雨の食べ物には気を使いますね。
→「腐りやすいので、その時食べる量しか作らない」
→「全部、食べきるように、少なめに作る」などの発言あり。
→「残さないで食べてしまう」とのこと。
リーダー:梅雨時の料理として、何か特別のものはあったんですか。
→「梅雨時だけに作ったり、食べたりする料理は、特別にはなかった」
→「料理に、梅干しを使ったり、入れたりすると、長持ちする」
→「煮物にも、梅を入れて、梅煮に」
→「おにぎりやお弁当にも梅干しを」
→「梅干しを入れるのは、梅雨時だけではない」、「特別、梅雨の時だけという
ものはない」という発言もあり。
リーダー:冷蔵庫はありましたか。
→「冷蔵庫はない」
→「氷を買って、冷やした」の発言あり。
→「昔は、氷屋がリヤカーで売りに来た」
→「氷を買えるのは、お金持ちだけ」という発言も。
リーダー:それでは、食べ物のお話になりましたので、お茶とお菓子の時間に移りましょ
う。今は冷蔵庫もありますので、冷たいお水もあります。
<座直り>
・お茶とお菓子で雑談に。
・「梅干よりも、やはり甘いもの」という話で盛り上がる。 ・番傘などの和傘は、下向きにしてから、開きながら頭の上へ持ってくるけど、洋傘はい
ろいろなさし方がある」とコ・リーダーの発言があり、「傘のさし方」の話題に。
→「同じでは」、「いや違うはず」、「傘をさす人がやりやすいように」などの発言あり。
<回想法を振り返って>
1)番傘に、皆さん好反応で盛り上がった。番傘は回想法では”良い道具”である。
*傘を開いてさすと、顔の色が紙の色に染まるので、顔色に映えて、綺麗であった。
→傘の下の人だけが幻想的(?)な雰囲気に。
(一瞬ですが、傘の下に「幻想の世界」が出現したような印象でした)
2)予定になかったが、相合い傘の場面は良かった。、
→「誰と一緒に傘の中に」、「どちらが傘をもったのでしょうか」など、話題と笑いが
広がった。
*写真も撮ることができて盛り上がった。
→蛇の目傘(じゃのめ)と番傘(ばんがさ)は、違うものなのか?
→違うとすれば、どう違うか、も話題に。
→蛇の目傘も用意できれば良かった。(今回は番傘のみ)
→和傘には日傘もあるので「番傘、蛇の目傘、日傘」の3種類が用意できれば、違いが
より分かる。
3)和傘(蛇の目傘や番傘)と西洋傘の違いについても話題にすればよかった。
*傘をさす時に、和傘は、下向き(体の斜め前)にして、開きながら(開いてから?)、
頭上にもっていく。和傘の重さと形よって、一番自然な所作とのこと。
*歌舞伎や時代劇では、和傘をさすときの所作は優雅なので、そういう写真も用意でき
れば、もっと面白いお話を聞くことができたかもしれない。
4)草履は手に持つと、藁でないことが分かる。懐かしそうに、撫でさすっていた。やは
り、手に触れるものはインパクトがある。
→高下駄、ぽっくりの思い出話も出ていたので、高下駄か、ぽっくり下駄か、用意しても
良かったのかもしれない。
→幼児用の赤い長靴、も面白いかも。(道具過多が要注意だが)
5)梅雨の時の子供時代の過ごし方は、思い出としてかなり残っている、と分かった。
6)室内での遊びとして、おはじきやお手玉が話題になることを予想しておいて、話題に
なったときには、すぐに取り出しテーブルに置くことができるように、事前に用意し
ておいてもよかった、と思う。
7)「○梅雨のクイズ」も、結構みなさん、集中して熱心であった。
→皆さん、クイズや遊びの類は、好奇心が自然に涌いてくるようである。
8)農家の出で、農家に嫁いだEさんは、急に「雨の方が、鎌が切れる。少し濡れていた
方が、草はよく切れる」という発言には皆さんびっくり(感動)した。
→「Eさんのお顔が、一瞬ですが”野良仕事しているときの顔”になったようにと感じ
ました」とコ・リーダー。
→Eさんの家では”草刈りの常識”であったことが伝わってきました。「なんでこんな
に大事なことが、いままで思い出せなかったのか」という気持ちと同時に、突然思い
浮かんだので、びっくりして発言してしまった、という様子も伝わってきました。
→皆さん、感心して聞き入りました。
9)少し集中が途切れてきたら「あめふり」を歌ったことについて。
→少し集中力に欠けてきていた方もいたので、良い具タイミングであったが、お元気な
方には「話題が続いているのに、急に歌になってしまった印象」の方もおられたかも
しれない。
10)ソファーに横になって参加されたFさんは、コ・リーダー(施設スタッフ)を介して
ではあるが、テーブルに座って参加されていた方と同じくらい発言していただけたこ
とはよかった。
11)新しく参加されたBさんは、今回は発言が少なかったが、回想法の席に座っているこ
とは嫌ではないようであった。慣れてから沢山発言していただくことに。
(リーダー 大吉)
<事後に調べて分かったこと>
(以下は、コ・リーダーの報告です)
・最近では傘売場には洋傘しか見かけませんでしたので、久しぶりに和傘を持ってみます
と、懐かしく、少し優雅な気分にもなりました。
・傘のさし方の話題がありましたので、「傘のさし方に、和洋の区別があるのかどうか」
と、興味を持って調べてみました。以下、インターネットの記事を読み、さらに販売店で
教えていただいたことを箇条書きにしました。
・「傘のさし方」に限定すれば、和と洋での作法上の違いはないが、重量と構造の違いに
よって、以下の差が生じる。
①和傘は重いので、閉じたまま頭の上に持っていって、頭上で開くには、ある程度の力
が必要であり、女性には難しいのではないか。(軽い蛇の目傘ならできるかもしれない
が)
②和傘は、紙が張ってあるので、少し回しながらゆっくり開いた方がよい。頭上で開く
場合には、力加減が分からないので、破けてしまう危険性が高まる。
・「傘のさし方」には、以下のようなルール(考え方)があり、それは和傘でも洋傘でも共通
で「近くにいる人に迷惑を及ぼしたり、危険を与えないようにすること」が基本のようです。
具体的には
①肩に担ぐようにして、傘を開かないこと。
→すぐ後を歩いている人にとっては、前方が傘で見えなくなる。
②頭上に傘を持っていって、それから開く場合には、近くにいる(左右と後方の)人に
傘の骨(「親骨」という名称)が当たらないように気を付ける必要がある。
③雨に濡れた傘を開くときは、周囲に水が飛ばないように気を付けること。
・結局、歌舞伎や時代劇で和傘を開くときのように、前方、下向き、生地をほぐすように
少し回しながら、ゆっくりと、が、和洋に共通の「正しい傘の開き方」のようです。
以上