無季のノート [どの季節でも:大根]
このブログでは行替えが不自然になる場合があります。パソコンのブラウザが新しいMicrosoft Edgeの場合です。他のブラウザでも生じる場合がありますが、内容は変わりませんのでご了解ください。。
<テーマの目的>
テーマ: 大根
目 的:大根は馴染みの食材であり、皆さん、日常のお料理では様々な調理の工夫も
されていたと思われる。また、大根を作っていた農家の方もおられるので、
「食べる方」と「作る方」両方のお話をしていただくことができる。
今が春大根の美味しい季節でもあるので、美味しい食べ方と、美味しい大根
の作り方を教えていただく。
<実施日と参加者> 実施日:2月下旬
場 所 : グループホーム
実施者:リーダー1名、コ・リーダー3名、施設スタッフ1名。
参加者:5名(90才台女性4名の方は要介護1~4、80才台女性1名)
<参加者への配慮>
・お元気だが遠慮気味の方は、リーダーが意識的に指名し、コ・リーダーはその方が発言
しやすいようにサポートする。
・お元気な方でも、聞いている(聞こえている)ように見えても、そうでない時があるの
で、集中していただけるように、話題に沿った問いかけを適宜行う
・片側のみ、かろうじて聞くことが可能な方には、コ・リーダーが聞こえる側に座り、
筆談によりコミュニケーションをとりながら、口頭でも話題を伝えてサポートする。
<進行予定>
1)大きな大根(青首大根)をテーブルの上に置き、皆さんに回して、手に持った感想を
お聞きする。
2)大根の料理について、主婦の時代に戻って、お話していただく。
3)農家で大根を作るときのご苦労を話していただく。
4)レディサラダ大根をテーブルに置き、名称と料理法をお聞きする。
→レディサラダ大根は、サラダのように生で食べていただく。
5)3種類の「下ろし金」をテーブルに置き、どれを使っていたか、お聞きする。
6)普通の大根おろしと、「鬼おろし」ですった大根おろしと、どんな味の違いがある
のか、実際にすって食べていただく。
<用意した道具>
1)大根(青首大根)
2)レディサラダ大根(三浦半島産、皮が赤い品種)
3)下ろし金を3種類
①金属製の古い形のもの(金属製)
②セラミックの丸い形のもの(最近のもの)
③鬼下ろし金(竹製)
<実際の進行>
リーダー:今月は28日までしかありません。2月は明日で終わります。
:何か損をしている気分ですね。
:でも、これを見ていただくと、豊かな気分になります。
→テーブルの上に「私の足より太いです」と大根を出す。
→皆さんに回して、手に取って持っていただく。
→「私の足よりも太い」、「ズシリしている。重い」
「どっちが太い。私の足の方が細いよ」、「葉っぱが短い」
「美味しそう」などの発言があり。
リーダー:皆さんのお馴染みの大根は、こんなでしたか?
→「つい最近まで、もっと細く、すらっとしてた」
「何時頃からこんな太くなったのかな」
「肥料が良すぎたから、こんなに育った」
「太くなる種類の大根だ」
「青首大根、そんな名前だった」などの話あり。
リーダー:大根はいろんなお料理にして食べますね。どんな料理が美味しかったですか?
→「煮もの」、「お新香」、「沢庵」、「千切りにして揉んで」
「おでんに」などの発言あり。
→「大根おろし、一番美味しい」、「大根おろしをかけると、どんなオカズでも
美味しくなる」
→「大根おろしには、鰹節をかける」
リーダー:おでんの大根は美味しそうですね。
→「おでんなら、大根も美味しい。ちくわも美味しい」
「醤油と砂糖と、お酒も入れたかな、忘れた」
「サトイモも入れたかな」
→「おでんは、作ったその日に食べるよりも、次の日の方が美味しい」
「味が染みるから」、「二日目、三日目の方が美味しい」
「作った日は味見くらいはするが、次の日に食べる」
「おでんに卵が美味しい」、「はんぺんも美味しい」
「おでんに、大根の葉の方は入れない」
「昔は、おでんは無かった。ごった煮にしていた」
「おでんではなく、大根だけ煮たのも美味しい」などの発言有り。
リーダー:大根にもいろいろな種類がありますね。昔は、もっと細くて長い大根だったよ
うな気もしますが。Aさんどうですか?
Aさん :私が作った大根は、もっと細くて長かった。色も白くて青くなかった。
:ニンジンも細く長かった。
リーダー:今は、スーパーには青首大根があって、昔の細くて白い大根はほとんど見かけ
ませんね。
:大根おろしは、この大根のどの辺を使うのですか?
→「頭の方」、「どっちでも、気にしていなかった」と意見が分かれたが、
「美味しいのは頭の方」、「頭の方はナマでも食べ、下の方は煮て食べる」
(筆談をしながら話題に参加されている方は「頭の方が美味しい」とのこと)
(大根の頭の方に印を付けると、「その通り」とうなずく)
→「主婦を何年もやってますが、頭の方が甘く美味しいなんて知らなかった」
と反省するコ・リーダー。
「皆さん、年の功ですね、良く知っておられる」などの発言あり。
コ・リーダー③:子供の頃、大根が抜いてみたくて、抜いてしまったことがありました。
今、思い出しました。
:そのまま持ってきてしまうと、泥棒になってしまうので、元に戻しておきま
したけど。
Aさん :一回抜いたら、もう駄目だよ。戻しても。(ときっぱり断言)
→「大根を抜いてしまいたくなったから、抜いちゃったんだって」、
「大根は簡単に抜けるよ」
リーダー:自分の畑の大根を、女の子が抜いているのを見たら、Aさんはどうしますか?
Aさん :駄目だよ、もう。抜いちゃったら。
:大根は、大きくなったのから、抜いていく。順番に。
リーダー:土に埋まっているのに、大きくなったと分かるのですか?
Aさん :それはすぐ分かるよ。
:べトコンに、2月くらいに種をまいて、暑くなるような日なら、朝から開けて
おいて、夕方になると閉めて。やっぱり、手間かかるよ。
(注:「べトコン」とは、畑の畝に竹製の支柱を半円形に曲げて刺し、ビニール
で覆った、かまぼこ型の温室のようなもの)
:大根の青い部分は、土から出ている。それで青くなる。
:大根は、大きくなると、上にせり上がってくる。それで分かる。
*「皆さん、知らないことがいっぱいありますね」と、リーダー。
(以下は、Aさんとのやり取りです)
→「市場に出すのは、大きいのから」、「洗うのは、器械に入れる」
「洗った大根の大きさを揃えて、箱に入れるのは、私の仕事」
「この毛を抜いてから、出荷する」(と、テーブルの大根を持って)
「この穴のところに髭が生えているので手で抜く。抜かないと、売れない」
→「髭を取っていたなんてね。大変でしたね」
「鬚を取らないと、お金にならないよ」
⇑(確かに、よく見ると、大根には毛穴があり、そこにヒゲが生えている)
「器械では、綺麗に洗える。水の中にぴちゃんと落ちる」
→「葉っぱはどうしていましたか」
「葉っぱは、洗う前に切る」、「昔は、葉っぱつけて売っていなかった」
「昔の大根は、こんなに太くなかった。これ太りすぎ。ここまで大きいと美味
しくない」
*「まっすぐで細くないと、Aでは売れない」(きっぱりと)
(大根には、A、B、Cのランクがあり、値段が違ったとのこと)
「これは、太いから、Bになるかどうか。Cかも」
→「太い方がいいと思ったけど」
「いや、市場には出せない。安くなる」
*「私の足は、太さからみて、Bか、Cだ」とコ・リーダー。
→「大根も、素性が良いと高く売れ、素性が悪いと安い」
「目方は、目分量。箱に入れたとき、大きさをそろえる」
「農協の人が、自動車で積みに来ていた」
リーダー:大根の葉は、どうしてましたか。皆さんはどうしてました?
→Aさんは「葉っぱは捨てた。昔は、葉っぱなんて使わないよ」
*Dさんは「味噌汁に入れた」
→「油で炒める」、「醤油とさとうで炒める」
「粕漬に入れる」、「漬物に入れる」
「捨てるところはないよ」などの発言あり。
Cさん :大根の葉っぱは、お米と一緒に炊くと美味しい。細かく切って。
:葉っぱは、陰干しして、保存しておいて、青みに使う。
:茹でないで、影干しして。
→「何日位干す?」の質問には「カラカラになるまで干す」
リーダー:大根の皮を持って、この皮もったいないですね。これどうしましょうか。
→「それは、干して、後で食べる」
「そのままでなく、細く切って、干す」 Bさん :切干大根作ったよ。
:薄く切って、細く切って干すと、切干大根に。
→「薄く切って、輪切りにして、そのまま干す。細く切らないでもよい」
⇑(Bさんは、実際に大根を切り「これくらいに切って干す」と見本を)
→「私も作った。私は細かく切ってから干した。簡単だよ」
「干すのは、4日か5日くらいかな。干すのは」
「切干大根には、油揚げを入れて、煮た」
リーダー:切干大根は、何日位もつんですか?
→「ずっと持つよ。次の大根が取れるまで」
「水に浸けて、戻して」
→「親指のここが痛くなる。細かく切ったので」
「そんなに沢山切ったの。凄いね」
「昔、大根が沢山採れたので、切干にすることが多かった」
→「私は、買った方が早い。自分で食べる量は少ないので」などの発言あり。
(切干大根は、皆さん作った経験があった)
リーダー:赤い色の大根をテーブルに置く。
→「初めて見た。何ですか」
「ニンジンかと思った」
「初めて見た。中は何色。中も真っ赤?」などの発言あり。
→皆さん「外は赤いが、中は白い」で意見が一致。
→「皮だけだよ、赤いのは」
「真ん中の芯(しん)だけ、ちょっと赤い」などの発言あり。
→「どうやって、食べるの」
「本当に大根なの」
「匂いは、大根だ。どうやって食べるのかな」
「大根なら、食べ方は同じでしょう」などの発言あり。
リーダー:包装に「レディサラダにどうぞ」と書いてある。「レディサラダ大根」かな。
:「三浦半島でできた」と書いてある。三浦半島は暖かいから。
:「サラダ」と書いてあるから、このまま食べてみましょう。
→スライスして、皆さんそのままかじる。
「けっこう甘い」、「けっこう美味しい」、「これはいい」、
「昔は見なかった。最近できたのでは」などの発言あり。
リーダー:これ何ですか?
:こんなのも持ってきました。と金属製の下ろし金をテーブルに置く。
→「それ昔の下ろし金」、「その下に丸い形のがついていて、大根をするとそこ
に貯まった」などの発言あり。
:今は、この丸い形のセラミック製が多いですね。これは、擦って(すって)い
ても指は擦ったことない。
:これは木の箱みたいですが、何ですか?(と「鬼おろし」をテーブルに置く)
→「初めて見た」、「知らなかった」という方も。
「家にある」、「見たことはある」方が多数。
「それは大きく粗く削れる」などの発言あり。
→「家の主人は、自分で作った」というCさんの発言に、皆さんびっくり。
リーダー:どんな味かな。食べてみましょう。
→青首大根を切る。皮もむく。
:青首は中も青い。赤いレディ大根は中が白かったけど、青首は中まで青い。
:誰か、擦って(すって)みる方は?
→「私やるよ」とCさん。」
*鬼おろしは、擦る音が、大きい。文字通り「スリ、スリ、スリ」と聞こえる。
:皆さん、食べてみましょう。まだ少ないか。もっと擦ってください。
→皆さん交代でする。「いい手つきですね」の掛け声あり。
→「もっと細く」、「そんなもんでいいですね」などのやり取りあり。
リーダー: さあ、この普通の下ろし金で擦った(すった)のが、これです。
:こっちの粗い粒粒のが鬼おろしで擦ったものです。味はどうですか。
⇑(鬼おろしですった大根おろしは、粒がかなり荒い)
→「かなりちがうね」,「食べ比べてみよう」,「醤油がないと、醤油を」などの
やり取りをしながら、皆さん、少しとって食べる。
⇑(下ろし金によって、粒の大きさも、水気も、かなり違う)
→「ああ美味しい」、「これは鬼おろし、こっちの方が甘くて美味しいね」
*鬼おろしの方が、皆さんに好評。
→「140円の大根とは思えない甘さ」、「鬼おろし、いいね。甘みがある」
「本当だ。こっちの方が断然美味しい」と、皆さん意見一致。
→「Cさんの旦那さんが、これ作ってしまうのは凄いね」
リーダー:Bさんは、さっきは、大根おろしは嫌いと言っておられましたけど、食べられ
すか。
→「擦るのは嫌いだけど、食べるのは好き」とBさん。
→「これに、カツオ節などかけるともっとおいしい」などの発言あり。
リーダー:「皆さん、こんなのどうですか」となめ茸の瓶詰をテーブルに置く。
→「これかけてみよう」と大根おろしにかける。
「美味しい」、「これは酒の肴だ」。
リーダー:この大根は美味しいですね。Aさんこの青首大根は、家で作ってましたか?
Aさん :昔は、こんな青いのなかった。昔の大根は白くて、細い。辛い。
→この青首大根は辛くないから、最近の流行り。みんなこの大根。
リーダー:三浦、練馬、大根いろいろありますね。同じ大根でも、名前も種類も違う。
:スーパー行ったら、この青首の隣に辛味大根がありましたが、見かけが悪かっ
た。買わなかった。
:やはり、Aさんが言われたように、大根にも氏素性があるんでしょうね。
Aさん :辛味大根なんて作らなかった。
リーダー:大根は何日位、出荷に時間がかかりますか?
→「抜いたら、一日か2日で出荷だよ」
「でもそれが、収穫が終わるまで、冬から春先までずっと続く。大変だよ」
→「大根は、種から蒔くんですか?」
「種の色は茶色だったかな。種は農協で買った」
→「二十日大根、聴いたことありますが、今頃に種まきですか」
「本当に二十日でできるよ」
「いろいろあるよ。夏は蒔(ま)かないが、秋、冬、春と蒔いたので、ずっと
大変。手間がかかるよ」
リーダー:大変ですね。鬚も取ってあげないと、
:昔は、大根も太ってしまうと売れない。形がスマートでないと高く売れない。
:この青首のようにデブになると、140円になっちゃう。でも、太っていも青首
は美味しい。
リーダー:今日は、皆さんのお話で勉強になりました。
:大根は、煮たり、おろしたり、皮を干したり、葉っぱは炒めて、全部使う。
万能食材ですね。感謝です。
:皆さんのような農家にお世話になって、大根が食べられる。これも感謝です。
:では、農家の方と大根に感謝しながら、美味しいお菓子をいただきましょう。
<座直り>
・お茶、お菓子を食べながら、雑談。その中で大根に関するものを略記します。
・食べるだけでなく、風邪のとき大根を切って、額(ひたい)に貼らなかった?
→それはネギでしょ。大根ではなくネギという結論に。
・大根は、食あたり、にも効く。消化が良くなる。
・大根を千切りにして、はちみつ入れて、咳止めに。
→砂糖で作った水飴を使った
・「家はサトウキビで作った砂糖を入れていた」(Aさん)
→「サトウキビを作っていたのは凄い」と皆さん。
→煮詰めて、飴状態になる。 ・青首大根は沢庵にはしないのかな?
→こんな太いのは沢庵には駄目。細くて白くなくちゃ。
・守口大根も「大根」というくらいだから大根なのかな?
→あの細い長い、ごぼうみたいの。
→この辺では作っていない。
→あれは、名古屋の方かな。
→大根の奈良漬けのようなもの。
(以下、コ・リーダーがスマホで調べて、皆さんに伝える) →守口大根は、世界一長い大根として、ギネスにのっているようです。
→名古屋の駅で売っている、値段が高い。蛇みたいにぐるぐるととぐろを巻いて箱に入
っている。
・「大根役者」というけど、どうして大根役者なのかな?ニンジン役者やゴボウ役者と言
わない。
→足が太いから、私の人生は大根役者だ。
(コ・リーダーがスマホで調べて、皆さんに伝える)
→下手な役者のこと。演技が大根のように、ズドーンとメリハリがない。
→もう一つは、大根は食あたりしないので、当たることがない役者のこと。
→棒読みで突っ立っているだけ。
<回想法を振り返って>
1)今回の大根では、「作る方(生産者)」と「食べる方(消費者)」と、両面から経験
談を聞くことができたので、話題が尽きない印象であった。
2)大根は、生活に馴染みの深いものであり、皆さんからいろなお話を聞くことができた
が、特に、農業をしていた方は、昔のことを沢山思い出され、生き生きとした表情で
お話されておられた。
→私たちの知らないことも、沢山の教えていただき、勉強になりました。
→しかし、発言時間が、「作る方」に偏り気味で、「使う(食べる)方」からも、
もっとじっくりお話を聞くべきであった。
3)同じ「大根おろし」という名称ですが、普通の下ろし金で擦ったものと、鬼おろしで
擦った大根おろしと、味が違うのにはびっくり。鬼おろしの方が断然に甘かった。
4)難聴の方には、筆談で話題の進行を時々刻々伝えるように心がけ、口頭での伝達は少
なめだったが、今日のようなやり方(筆談中心)の方が、しっくりとくるようにも感
じた。
→今後とも、よりよいサポートができるよう、いろいろと工夫が必要。
5)話題の進行の中で、確認した方が良いと思われることについて、コ・リーダーがスマ
-トフォンを使ってすぐ調べ、皆さんにその場で報告するのはなかなかよかった。
→話題の進行の中で、何か疑問が湧いたとき、その場で確認し、すっきりとした方がよ
い場合もあるので、曖昧なまま別の話題に移らない方がよいと思ったら、コ・リーダ
ーがスマートフォンを使うのも良いと思う。
(インターネットの便利さを実感しました)
(リーダー 室井)