無季のノート [どの季節でも:赤ちゃんと子育て]
<テーマの目的>
テーマ:赤ちゃんと子育て
目 的:赤ちゃんが生まれ、子育てに頑張っていた頃を振り返っていただきます。
私(リーダー)の娘に赤ちゃんが生まれ、私自身も若い頃を思い出しながら、
子育て(孫育て?)を手伝っております。
皆さんにも、ご自分に赤ちゃんが生まれ、子育てした頃を思い出していただ
こうとこのテーマを選びました。
<実施日と参加者>
実施日:3月上旬
場 所:グループホーム(デイサービス併設)
実施者:リーダー1名、コ・リーダー2名
参加者:8名(100才の女性2名と90才台女性3名と80才台女性2名は要介護
2~4、80才台女性1名)
<参加者への配慮>
・お元気だが遠慮気味の方は、リーダーが意識的に指名し、コ・リーダーはその方が
発言しやすいようにサポートする。
・お元気な方でも、聞いている(聞こえている)ように見えても、そうでない時が多
くあるようなので、集中していただけるように話題に沿った問いかけを適宜行う。
・片側のみ、かろうじて聞くことが可能な方には、コ・リーダーが聞こえる側に座り、
筆談によりコミュニケーションをとりながら、口頭でも話題を伝えてサポートする。
・座位を保つことが難しい体調の方もおられるので、ソファへの移動も考慮する。
<進行予定>
1)赤ちゃんと母親(私の孫と娘です)も参加させ、皆さんに赤ちゃんを抱っこして
もらう。
2)お話いただく子育て期間は、1才あたりまでとして、母親としての喜びをどんな
ふうに、感じて、悩んで、大切に育ててきたのか、お話しいただく。
<用意した道具>
1)赤ちゃん
<実際進行>
リーダー:皆さん、こんにちは。
:皆さん、シールは貼られましたか?
(皆さんが着席され、出席簿に出席のシールを貼っている時に、赤ちゃんが
お母さんに抱っこされて登場)
→「可愛い」、「笑っている」、「泣かない」など、赤ちゃんを見てびっくり
したり、喜んだり。
リーダー:今日は、私、娘、孫、の三世代でやってきました。
→「わー、可愛い」(皆さんわいわい)
(リーダーが抱っこする。まだテーブルに立てない)
→「あらあら、泣いちゃった」、「もう笑っている」、「笑った」(皆さん)
:まだ、6ヶ月。
:Aさん、ひ孫だよ。
→「ひ孫はいたよ」(Aさん)
:まだ愛想がいいです。まだ人見知りしません。今のうちです。もうちょっ
とすると人見知りします。
リーダー:では、始めましょう。
:今日は、皆さんに、お母さんに戻っていただきます。
→「まだ私に抱っこしてる」(Bさん)
→「まだ、何も分かんないから、いいね」(Cさん)
「人見知りする頃になると、泣かれちゃうよ」
「孫が遊びにきても、そばに行けなかった。泣くので」
「慣れる頃には、帰っちゃう」(Cさん)
→「おっぱい飲むの?、ミルクは?」(Dさん)
リーダー:今日は、赤ちゃんがテーマです。
:赤ちゃんと子育てのお話。そこで赤ちゃんを連れてきました。
:そして、今日は、Cさんのお誕生日です。
:女の人だから、お年は聞きません。Cさんが赤ちゃんの頃は、どんな赤ち
ゃんだったか、覚えてませんよね。
→「自分の赤ちゃんの頃は、分かんないね。覚えてない」(Cさん)
:お子さんは、何人ですか?
→「3人。男二人、女一人」(Cさん)
:子育ては大変でしたか?
→「楽じゃないね」(Cさん)
リーダー:3人ともおっぱいですか?
→「少なかった」(Cさん)
:こんなの使いましたか?
→「使った。でも昔は粉ミルクといっても、たいしたの無かった」
「粉ミルクはあったけど、おっぱいだった」(Cさん)
→「もらいおっぱい、あったね」(Dさん)
→「沢山は出なかったけど、もらってない。自分ので」(Cさん)
→「自分も沢山は出なかったけど、自分のだけでやっとだった」(Hさん)
リーダー:Bさんは、おっぱいでしたか?
→「4人子供がいたけど、全部、自分のおっぱい」
「だから大きい」(Bさん)(「大きい」という手振りに、皆さん大笑)
(皆さんは「自分ので足りた」、「少し足りなかった」など、わいわいがや
がや。「もらいおっぱい」はしないで、何とか大丈夫だったとのこと)
リーダー:私は、あの子(赤ちゃんのお母さん)を育てるのに、あまり出なかった。
→「重湯(おもゆ)という、おかゆのようなものを飲ませる人もいた」
(Gさん)
→「米を粉にして、甘く砂糖を入れて、飲ませた人も」(Dさん)
(赤ちゃんは、お母さんに抱っこされて、皆の話を聞いている)
→「おとなしいね。泣かないで、抱っこされている」
「おとなしいね」、「可愛いね」(など、皆さんは赤ちゃんに注目)
→「可愛いね。可愛いけど、一人前に育てるのは大変だったね」(Bさん)
→「そりゃ楽じゃないね。当時は、何にも、ものがなかったから」(Cさん)
「当時は、東京にいたから、地元でなかったから、大変。ミルクは主人が
見つけてくれた」(Cさん)
→「脱脂粉乳、なんてあったね」
「油が少し浮いてくるの」(Dさん)
リーダー:Hさんは、お子さんは?
→「3人。三つか四つ離れている」(Hさん)
:大変だったでしょう。ネジリハチマキ?
→「大変よ。ネジリハチマキはしなかったけど、あっちが泣いて、こっちを
抱っこして」
「親がいたから、親に見て貰った」
「お母さん。おばあちゃんもいたから」(Hさん)
:三世代ですね。
→「でも、お父さんとおじいちゃんはいなかった」(Hさん)
:女手があると、いいですね。
→「3人いた。皆、三つ位づつ離れていた(Aさん)
「おばあさん、おっかさん、もいた」(Aさん)
:Aさんのおばあさんですから、四世代が一緒だったのですね。
→「私は一人で育てた」(Bさん)
:一人で、ですか? 皆さん、ここに豪傑(ごうけつ)がおりました。
→「4人の子供がいたが、3歳くらいづつ違う」
「一人はいつも抱っこ。大変だよ」(Bさん)
:大変だったですね。その頃は鬼みたいな顔で頑張ってましたか?
→「自分の顔なんか、分かんないよ」(Bさん)
:ご飯の支度は?
→「やったよ、しょうがないから」(Bさん)
「白いご飯だけでは、子供は食べない。おかずは、なんかしらは作った」
「おかずは、一つ。そんなもんだよ。いっぱいはできないよ」(Bさん)
「洗濯もやったよ。こんなにして」(洗濯板をこする動作をされる)
:今みたいに、スイッチ入れて、ポンじゃないですね。
→「私がこうすると、背中の赤ちゃんの頭がこうなって」(前後に、ぐらぐ
ら、揺すられる様子を、Bさんは身振りで)
「それでも寝てたよ」(笑い)
「背中で、こんなになっても、寝てるよ。洗濯板で洗ったね」(Bさん)
→「洗濯は印旛沼で洗った。水はきれいだった」
「洗濯も、食べ物も洗った。場所が決まっていた」(Dさん)
→「おぶわなきゃ、洗濯できない。掃除する時もずっと」(Bさん)
「若いから、肩がこったりしない」
「初めてできたのが、二十歳だったからね」(Bさん)
→「私は、22歳くらいかな。初めての子供は」(Cさん)
:Aさんは、初めてのお子さんは何歳の時ですか?
→「何歳だったかな?忘れた」(Aさん)
:18歳?
→「そんな若くはない。忘れちゃった」(Aさん)
:初めての赤ちゃんができたときは、どんな気持ちでしたか?
嬉しかったですか?
→「そりゃ、嬉しかったよ」(Aさん)
:旦那さんも喜んでくれましたか?
→「そりゃ、そうだったよ」(Aさん)
→「初めて子供をお風呂に入れるときは、どうしようか、と思った」(Bさ
ん)
→「そうだね」(Aさん)
→「ツルツルしてるから、落っことしたら、たいへんでしょ」
「おっかなかったよ」(Bさん)
:落っことしたは、なかったのですか?
→「そんなことはなかったよ」(Bさん)
→「首をちゃんと持って、こうしてね」(手真似をしながら、Dさん)
リーダー:初めてのお子さんが生まれた時は、どんな気持ちでしたか?
→「私は一人しかいない。女の子」(Hさん)
「生むのは大変だけど、みんなやっていることだから」(Hさん)
(男性のコ・リーダー②が、次の質問をしたら、お話に熱がこもる)
コ・リーダー②:ご自分の赤ちゃんは、生まれて最初に見た時、可愛く思いましたか?
→「そりゃ、可愛いよ」(と皆さん)
:しわくちゃで、お猿さんみたいだったことを思い出しました。
→「可愛いよ。男のひとに人には分かんないよ」(Gさん)
→「女は自分のおなかを痛めたから、可愛い」(Hさん)
→「男には分からない。あのお腹の痛さは分かんないよ」(Gさん)
→「子供を殺した事件がよくあるが、なんでそんなことができるか、分から
ない。可愛くてしょうがないよ」(Bさん)
→「自分の子は、どんな**でも可愛いって言いますね」(コ・リーダー①)
→「どんなにお金貰っても殺せない」(Bさん)
「自分の食べ物を削ってでも、子供には食べさせる」
「食べ物がなかった時、子供にあげたもの」(Bさん)
→「私の母が、自分はおっぱいがいっぱい出たから、あんたも出るよ、と言
ってくれた」(Fさん)
「だから、おっぱいで育てたが、少し大きくなったら、ミルクもあげた」
→「おっぱいが張ってくると、痛いの」(Gさん)
「張ってくると、すぐ、飲ましちゃう。すぐ飲ませれば痛くない」(Gさ
ん)
→「ピュー、と出るよ。噴水のように。本当だよ」(Bさん)
→「お母さんの栄養もあるけど、ピューと出ますね」(コ・リーダー①)
→「ピューと出るから、濡れちゃう。手ぬぐいを当てていた」(Gさん)
→「いっぱいは出なかったので、赤んぼが大きくなってきたら、足りないの
で、薬局に相談したら、粉ミルクを飲ませるように言われた」(Fさん)
→「粉ミルクは、お金がないと買えない」(Gさん)
→「ミルクもほ乳瓶の口では、ぺっと吐き出しちゃって、飲まない。やっぱ
り、本物のおっぱいしか飲まなかった」(Bさん)
リーダー:皆さん、ご自分のおっぱいで育てたんですね。
:おっぱいを吸われる感覚は、どんな気持ちでしたか?
→「幸せな気分だよ」(Bさん)
→「良かったよ」(Aさん)
→「嬉しかったね」(Fさん)
→「出は良くなかったけど、幸せと思った」(Hさん)
(「それにしても、おとなしい赤ちゃんだね」というCさんの発言で、皆さ
んは改めて赤ちゃんに注目)
(来客の赤ちゃんは静かに、皆さんのお話を聞いて?いる様子)
(「おなかがいっぱいだから、おとなしい」とお母さん)
リーダー:では、おむつはどうしてました?
→「浴衣を、ほどいて、洗って、輪にして洗濯棒に干した」(Bさん)
→「一反の木綿を買ってきて、おしめにした」(Cさん)
→「浴衣の古いの。肌触りがいい」(Bさん)
→「おむつは、自分で縫ったよ」(Cさん)
:何枚くらい作ったのですか?
→「数えてないよ」(Cさん)
「横に2枚、立てに1枚。3枚使ったと思うよ」
「1日に何回かな。日によって違うよ」(Cさん)
コ・リーダー②:何処の家に赤ちゃんがいるのかは、庭の物干し見れば分かりましたね。
あれだけの沢山のおむつは、使わなくなったら、誰かにあげたんですか?
:取っておいて、また浴衣に縫い直すのですか?
→「ぼろにいれて、ゴミと一緒に捨てた」(Bさん)
→「洗ってしまっておいたけど、使わなくなって捨てた」(Gさん)
→「もうボロボロになっている。汚れがなかなか落ちないから、石鹸つけて、
ゴシゴシやるから、ボロボロになっちゃている」(Bさん)
:庭に干してあるおむつは、風に吹かれて、吹き流しみたいにきれいに見え
ますが。
→「人にはあげられないよ。おむつは」(Bさん)
→「長く持つものじゃないよ。雑巾にした」(Dさん)
→「燃したかな?忘れた」(Cさん)
→「昔の人は手が達者だから。おむつは自分で縫った」(Dさん)
リーダー:赤ちゃんが泣いた時は、まず何を考えますか?
→「おっぱいかな」(Dさん)
→「まず、おっぱい。飲んだばかりなら、おしっこ」(Hさん)
:濡れてないのに泣いたら?
→「外に連れて行って、ヨイヨイとあやした」(Bさん)
リーダー:初めて寝返りしたり、初めて立ったり、した時のことは覚えてますか?
→「覚えているよ」(Aさん)
「角に頭をぶつけた。あと一歩、と言うところで、こんな角のところに、
ぶつけた」(Aさん)
→「炬燵(こたつ)の縁に手をやって立っている時、歩くようになればいい
な、と思った」(Cさん)
→「つたえ歩き、ちょっと手を貸してあげると、歩けるようになる」(Cさ
ん)
:炬燵(こたつ)は、高さが丁度いいですね。
(来賓の赤ちゃんは、静かに、皆のお話を聞いているかのように、ニコニコ
している)
→「泣かないで、利口だね」(Dさん)
→「笑っているよ」(Cさん)
リーダー:皆さんのお話を聞いて、赤ちゃんもご機嫌みたいですね。
コ・リーダー①:こんな風に、いつもニコニコしていますか。
→「そうですね。こんな感じです」(お母さん)
「やっと寝返り。ハイハイはまだです」(お母さん)
リーダー:だんだん大きくなって、小学校に入る頃は、親からも離れていきます。
:どんな気持ちだったんでしょうか。親としては嬉しかったですか?
→「嬉しいより、大変。学校に行くのは」(Cさん)
→「どんなふうになるかな、心配だった」(Aさん)
→「昔は、あんまり悪い人がいなかったから、暗くなっても、遊んでいて」
「大人の自転車しかなかったので、それに乗って遊んでいた」(Cさん)
:子供は体が小さくて、乗れないから、三角乗りしていたですね。
→「私が仕事から帰ってきたら、下水か何かに落ちたらしく、顔が血だらけ
になってた」(Cさん)
「主人が夜中に自転車に乗せて、医者に行って、3針縫った」
「私は、寝ないで待ってた。びっくりした。心配だったよ」
「夕飯も食べないで行ったので、パンを食べた、と言っていた」
「眼は大丈夫だったので良かった」(Cさん)
:今のようのに、子供の自転車が無かったですからね。
→「大人の自転車で、転んだ。本当にびっくりした」(Cさん)
→「あんまり子供ことは心配しかったよ」(Bさん)
「欲しいといえば、買ってやったよ」
「自転車屋の前で、2時間も泣いているので、買った。しょうがないか
ら」(Bさん)
「子供は自転車を乗りたがったよね」(Cさん)
リーダー:皆さんのお子さんの学校の成績はどうだったんですか?
→「上の口じゃないよ」(Cさん)(笑い)
→「苦労したことよりも、楽しかったことの方が覚えていますね」(コ・リー
ダー①)
リーダー:皆さん、子供を産んで良かったと思いますか?
→「そりゃそうよ。産んで良かったよ」(Bさん)
「子供いないと、大変だよ。若い時はいいけど」(Cさん)
(「子供のいる人は、運が良かった」、と皆さん頷く)
→「子供がいりから頑張れたよ」(Bさん)
リーダー:男性の方も、お子さんがいて幸せですか?
→「幸せですが、女の人とは、少し違いますね。子育てが終りましたので、
今は一人旅に出たいです」(コ・リーダー②)
→「一人で旅に出ればいいよ」(Bさん)
→「まだまだ若いから、大丈夫だよ」(Cさん)(笑い)
リーダー:どんな苦労しても、産んで、育てて、幸せですね。
→「子供も3人3様」(Cさん)
:確かに、同じ親なのに、考え方も行動も全部違う。どうしてですか?
→「分からないよ。そんなこと聞かれて困っちゃよ」(Cさん)
→「確かに違う」、「親は同じでも違うね」、「神様しか分からないよ」
などと皆さん、わいわいがやがや。
:神様だけが知っているそうです。
:では、神様が登場いしたしましたので、そろそろお茶に。
<座直り>
・本日はCさんの誕生日なので施設からケーキがプレゼントされ、皆さんもお裾分け
をいただきました。
(回想法を実施した「その日が誕生日」であったことは初めてです)
→「同月」でのケーキは沢山ありますが、「当日」は初めてですので、ハッピー・
バースディのかけ声にも気合いが入りました。
・赤ちゃんは、お茶の時間でも、ずっとニコニコしていました。
(「一つも泣かないで、偉いね」、「皆と一緒で、嬉しいみたい」、「まだおっぱ
いだけで、ケーキは食べません」などと、最後まで話題の中心でした。立派な
主役でした)
<回想法を振り返って>
・私(リーダー)が回想法のテーマを「何にしようかな」考えておりましたら、丁度
遊びに来ていた娘から「回想法ってどんなことをしているの?」と質問がありまし
た。孫(赤ちゃん)もニコニコして、一緒に私を見ています。
・「そうだ、娘と赤ちゃんと一緒に連れて行こう」とひらめきました。
→赤ちゃんを見ながら、皆さんにお話していただければ、ご自分の子育て時代を思
い出されて、かなり盛り上がるのではないか、とも思いました。
→赤ちゃんは生後六ヶ月ですので、まだ人見知りせず、だれにでも愛想の良い時期
です。もうしばらくすると人見知りと自己主張が始まりますので、絶好のタイミ
ングでもありました。
・参加された皆さん全員が赤ちゃんに興味津々(きょうみしんしん)で、日頃の何倍
も、笑顔が多かったように思います。
→また、いつもはお話が出にくい方でも、今日は「赤ちゃんと子育て」いう思い出
に集中してお話されていたように思いました。
→赤ちゃんは、「回想法の道具(?)として最強」とも感じました。
・しかし、私自身は、最初はなんとなく落ち着きませんでした。孫(赤ちゃん)のこ
とが気になっていたのかもしれません。
(リーダー:室井)