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田植え(要約編) [夏:田植え(要約編)]

お知らせ当会から、回想法の本が出版されました。詳しくは右欄の「出版のお知らせ」をご覧ください。     この「田植え(要約扁)」は、参加者の方とのやりとりの部分<進行の様子>は話題毎に要約
 しました

・また、リーダー(とコ・リーダー)が  ”どのようなことを考えながら実施していたか”を、
 なるべく多く記すようにしました。


田植え(要約編)

<テーマの目的>
テーマ:田植え
目 的:連休が終わり、暖かい風に誘われて戸外に出れば、田圃では田植え姿を見か
    けるようになります。昭和の時代に戻って、ご家族との思い出も一緒にお話
    いただきます。

<実施日と参加者>
実施日;5月中旬
場 所:グループホーム(デイサービス併設)
実施者:リーダー、コ・リーダー5名
参加者:7名(100才台の女性1名と90才台の女性6名。要介護3~4)

<進行予定>
①5月の陽気の話題から、この季節の風物詩である田植の話題に移る。
②子供の頃に手伝った様子や、ご家族のこともお話しいただく。
③最後に「田」の文字に関するクイズを行い、田という文字が生活全般に係わっ
 て使われていることを知っていただく。

<用意した道具>
①田植えの写真

   田植八木迷々.jpg (写真1)


  田植②ぱくたそ無料.jpg(写真2)


  田植機械acworks.jpg(写真3)


  田植機械①acworks.jpg(写真4)

  合鴨萬田農園0995-59-2854.jpg (写真5)

 

  蓮華畑⑤.jpg(写真6)

  蓮華s...p.jpg(写真7)

 ②「田の文字テスト」の問題用紙とその解答   
   時間に余裕があれば、最後に「田」の漢字に関する簡単なテストを行い、「田」に
  ついての知識を深めたいと思います。(問題と解答は、該当部分に記載)

<進行の様子>

1)開始
 ・実施日は五月晴れ。何となくうきうきとして、軽やかな気分で始まりました。
 ・田植の写真を見ていただくと、「これは手植えだね」、「今は機械でさっと植え
  ちゃうけど、昔は手植えで大変だった」などと、すぐに話題に集中されました。
 (本物の苗は用意できませんでしたが、写真を見ただけで、記憶が戻ってくるよう
  でした) 
2)田植えの想い出
 ①代掻き(しろかき)
  ・まず、田植の前に代掻きをする。
   田圃の水の塩梅(あんばい)をみながら、代掻きをする。
  ・代掻きは男の仕事。
   機械が無いときは、引っ張るのは力仕事。
  ・代掻きが、きちんとしてないと、凸凹ができて、水に潜る苗がでちゃう。
   機械でやれないところ、女手で。
  (代掻きをやったことある人、と、見たことがあるだけの人と、半々)
  ・紐を何本か張って、苗が真っ直ぐになるようにした。
      紐の間は、1間くらい離れているので、紐と紐の間の列では、上手と下手が出
      る。下手の人の植えた列は直ぐ分かる。

      田植4.jpg 

 ②服装
  ・田圃に入ると、ヌルっとする。慣れないと気持ち悪い。
   股引(ももひき)はいて、入る。
   股引は自分でにぬった。
    ・裸足で入っていた方と、足袋を履いた方も。
  ・田の深いところは、足が抜けなくなる。
   深いところは、下駄みたいなの履いたが、歩くのが大変だった。
  (それは「頑張ったね」と賞賛の声)
  ・絣(かすり)の着物で、前掛けした。傘も被って。
   モンペではなく、股引(ももひき)をはいて。
  ・昔の早乙女の写真みたいに。
  (「格好よかったね」などとワイワイ)  

 ③お弁当とおやつ
  ・祖母の家で田植をやっていたが、私は見ていただけ。
  ・お昼のおむすびを作って、持って行って、田圃で食べた。
   お昼を届けるのは、子供の仕事。
   おばあちゃんが、お弁当を作って、父や母がやっている田圃へ持って行った。

 ④田植えは共同作業
  ・私の村では、田植は村の皆が一緒にやるので、お昼もいっぱい作って、持って
     行った。
     お互いで手伝う。村が総出で。
     だから、おやつを持っていくのが大変だった。
     10人以上が来てやったが、お互い様だった。
     自分の田圃をやってもらう家が、お弁当とおやつを作って持って行く。

  ・自分の家は、親戚が来て皆でやった。
   ご飯を持っていくのが、子供の仕事。おやつも沢山。
   おばあさんが作っておいた。
  ・途中の道で、蛇が出るから厭だった。
   田圃には、草群(くさむら)を通っていくので、怖くて厭だった。

    田植全体④.jpg

⑤農繁期
  ・田植えの時は、学校も休みだった。
   (「そうか、農繁期があった。昔は休みだった」などとワイワイ)
  ・農家は、皆休んだ。
   学校全体が休んだ。農家でなくても休んだ。
   その代わり、夏休みが短かった。
  ・田植えの時期には手伝うのが子供の仕事。
   手伝わないわけにはいかなかった。
  ・私の学校では、休みにならなかった。
   農家でなければ、学校に行った。
  ・低学年は、手伝えないので、農家の子でも学校に行った。

 ⑥戦争の想い出
  ・娘の頃、大きな農家の息子と結婚することになっていた。親が決めていた。
   農家の嫁は大変なので、厭だったが、年頃になって、そろそろという話があっ
   たが、戦争で兵隊に取られて、戦死してしまった。
   可哀想だったけど、まだ話だけだったので、半分くらいはホッとした。
     (「そんなことあったよね」「その方が帰ってきたら、農家で田植していたね」
    などとしんみり)
  ・相手が農家なので、親は畑仕事の衣類も嫁入り道具に用意したが、使わなかっ
   た。
   自分は、従軍看護婦になろうと、東京で勉強している時も、農家の嫁になるこ
   とが決まっていたので、農家の嫁になるには田植できなくては、と、その時期
   になると、実家で手伝っていた。
  ・男は戦地へ行って戦うが、女は何もできなかったので、せめて従軍看護婦に、
   と思った。お国のために。その頃はそんな気持ち。
      (「偉いね」と皆さんが感心)
  (「男は戦争に取られ、長男が戦争に行くと農家が困る」、「田植が出来ない」
    などとしんみり)
  (「農家の嫁は大変。嫁にはいかない」、「私もどろんこは厭だね」などとワイ
    ワイ)
  (リーダーが「そんな時代で、皆さんいろいろなご苦労がありましたね。では
    平和になってからの田植のお話に戻りましょう」と田植の想い出に戻る)

     DSC01824.JPG

    ⑦献上米
  ・近所の神社の田圃で、献上米の田植をしていた。3枚の田圃があって、田植し
   ていた。男も女も凄くきれいな着物を着て、お化粧もして、頬も真っ赤っかに。
  (「それは御田植え祭だ」とワイワイ)
    ・お囃子する人もいて。カランカランと鉦(かね)と太鼓も。
   そして、一斉に苗を植え始めた。

 ⑧田植えの時期
  ・今は5月だが、昔は6月の梅雨時にやった。今は早くなっている。
  ・富士山の雪が消えたら、やる、とか、地方によって大体決まっていた。

      ・東北では、田圃の水がまだ冷たいときは、やらない。水が暖かくなってから。
   山の水が温かくなってから。東北は寒いので。 
 ⑨手植は大変だった
  ・「手植え」が機械で植えるやり方に。
  (機械で植えている写真を見ながら)
  ・今はこれで終わり。機械がやってくれる。
      ・でも、端(はし)や角は今でも手植え。

  ・昔は機械が無かったので、苗の束をポーンと投げて植えた。
   苗取りに行かなくてよいように。畔(あぜ)から投げた。
   下手だと、届かない。
   「オーイ」と言うと、「ハーイ」と投げる。
   今は、全部機械に乗せて、もう投げない。
   自分は機械の運転はしない。倅(せがれ)がやった。
   息子の時代になると、私は田圃には入らなかった。

  ・機械は値段がが高いので、村中の畑を順番にやった。
   皆で一緒にやるのは、手植えも機械でも同じだった。
  ・機械は、おにぎりがいらない。

      田植全体⑤.jpg

   ⑩草取り
  (リーダーが「田植は無事に終わったら、次は田の草取りですね」と田の草取り
   の話題に)
  ・田の草取りも、今は機械。昔は手で取っていた。
  ・手植えしていた頃は、草取りも手作業。
   腰が痛くなって、大変だった。
  ・機械になってからも、田の端や角は手で採っている。
  ・家では、機械でも大変なので除草剤にした。人手(ひとで)が要らなくなった。
  (お話を聞いているだけも、田の草取りのご苦労が伝わってきました)

 ⑪深田(ふかだ)
  ・家の田圃は深いので、畑仕事の方が楽でよかった。
  ・腰の辺りまで、このあたりまで潜った。もっと深いところもあった。
   田の草も、深いところは大変。私は、深いところは入らない。
   「そこは深いから逃げろ」と言われて、浅いところだけ。
   深いところはお父さんが取った。
    ・稲刈りになると、もう水が無いから、何処でも大丈夫。
   田植と田の草取りは、水が張っていると大変だった。
  (「稲が大きくなると、根っ子が張るので大丈夫」、「いろいろと大変だったね」
      「そんなことも分からなくて食べていた」とワイワイ)

 ⑫ドジョウや田螺(たにし)や蛙
  ・田圃の中でドジョウを獲った。
   夜に、田圃に行くと、ドジョウは、真っ直ぐになって、眠っている。
   それを針金で引っかける、簡単に獲った。
   私は、居眠りしていて、ドジョウの入ったバケツをひっくり返して、お兄さん
   に叱られた。
     ・網の上の餌を置いておくと、ドジョウが沢山あつまるので、それを引き上げる
   と簡単に取れた。昼間でも獲れた。
   獲ったドジョウは、父が食べた。私は食べなかった。
   
  ・田螺(たにし)は美味しい。
  ・今は、田圃に何にもいなくなった。農薬をたくさん撒くから。
     ・エビも蟹もたくさんいた。小さなエビや蟹が。
  ・田圃の端に、穴が開いているから、何だろうと指入れたら、ザリガニに挿まれた。
   今は、ザリガニもいない。
     ・蛇も稲の間を泳いでいた。
  ・鴨が水草を食べてくれるから、鴨がいると草取りが楽と言っていた。
   最近は、農薬の代わりに鴨を沢山放しておいて、害虫を食べてくれるやり方も
   あるらしい。

   合鴨萬田農園0995-59-2854.jpg

  ・田植えの頃、蛙の鳴く声がうるさかったが、今はほとんど聞こえない。
  (「昔は田圃にドジョウが沢山いた」、「メダカも蛙もいないね」などとワイワイ)


 ⑬蓮華(れんげ)
  (「これは何の写真ですか?」と蓮華(れんげ)畑の写真を回覧)
     ・きれいだね。田植をする前は、みんな蓮華畑にしていた。肥料の代わり。
  ・私の所は、田が深いから、蓮華は植えられなかった。深い田圃はだめ。
  ・レンゲで、髪飾りや首輪を編んだ。女の子の遊び。
  ・農家の子よりは、町の子がレンゲであそんでいた。農家の子より町の子が喜ん
   でいた。
  ・蓮華の上を裸足で駆け足した。田圃の蓮華の花は踏み潰しても怒られない。
   柔らかくて、ふわふわして、変な感じだった。
  (皆さん楽しそうにワイワイ)

  蓮華畑⑤.jpg

  蓮華s...p.jpg

 ⑭「田の字テスト」
  (最後に約10分くらい「田の字テスト」を行って終了)

    田の字問題.JPG


<解答>
 男 畑 畠 町 界 畦 畔 畝 略 留 畜 異 (など、どれでも正解)

(正答率は50%くらいでした。「難しい」と言いながらも、皆さん楽しそうに
 チャレンジ精神を発揮されておりました)

  田植7.jpg 

 <座直り>
・お茶の時間に、漢字が生まれたばかりの頃(約3000年前)の古い字体を見ていた
 だきながら、「田」について雑談をしました。(白川静「字統」平凡社より)

   解答番号付き①790.jpg
①田→「区画された田の形」が最初の字形でした。
②男→参加者の方から「田圃に鋤(すき)か鍬(くわ)だから、男」との発言がありま
   した。(正解でした)
③留→「川流とみられるものの両側に溜まり水の形を加え、その傍らに田をそえたもの」
   「留」は「田地に水を留める」ことを表す字形だったことが分かります。
④略→その土地(田)で神に祝詞をあげていることの象形。
   「争奪した土地の経営を行う」との意味があり、「農地争いの境界を画定するた
   めに生まれた字」で、その画定を神に祈っておりました。  
   今でも、計略、知略、略奪、戦略などの熟語に「略」が使われておりますが、
   「争いに勝つための知謀や計画」という意味が含まれでおり、そこに「田」の字
   が入っていることが話題になりました。
・参加者の皆さんが使っていた漢和辞典は、甲骨文字発見以前の学説によりますので、
 全く新しい考え方に興味津々でした。漢字と日常生活の関係の深さが話題になりま
 した。
(注:中国での甲骨文の発見が1899年。1950年頃から本格的な発掘調査が行われ、
 新しい発見を基に、白川静が新しい体系の漢字辞典「字統」を2007年に出版)

<実施後に振り返って>
 ①参加者の皆さんにとって、田植えが生活の一部になっておられたことがよく分
  かました。農家の方は当然ですが、経験のなかった方も、田植えの風景をよく
  覚えておられ、発言もたくさんありました。
  田植えの想い出は、また幼い頃の故郷の想い出でもあり、ドジョウや蛙や田螺
  などが、身近な生き物が登場してきたことも印象的でした。
 ②本物の苗を用意することはできませんので、写真を見ていただきながらの進行で
  したが、回想のきっかけとして十分のインパクトがありました。
  田植えや田園風景が、生活の中に深く根ざしていたことが伝わってまいりました。
    そして、田植えが村落の人たちの共同作業であったことも印象的でした。

 ③お疲れ気味の参加者の方が、話題に集中していただけるように、コ・リーダーが
  こまめに背中をさすったり、手を握ったり、話しかけたりして、最後まで参加し
  ていただきました。
                                                                   (リーダー:石川)

<写真について>
・写真はネットからお借りいたしました。ありがとうございます。
 写真①「photoAC八木迷々」    写真②「ぱくたそ」 
 写真③「photoAC acworks」    写真④「photoAC acworks」
   写真⑤「萬田農園」(http://www.kirishima-aigamo-school.info/
 写真⑥「photoAC ojojo」          写真⑦「photoAC s・・・p」

 (敬称は略させていただきました)

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