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回想法と認知症について [お薦め本]

*回想法の概要回想法の目的、効果、実施状況など、その概要について、読みやすく書かれております)

『コミュニケーション・ケアの方法』(「思い出語り」の活動)』

 フェイス・ギブソン著 筒井書房 2002年 

・高齢者を介護する上で「思い出を語る」ことが如何に重要かがよく分かります。回想法も含めて高齢者と「思い出語りの技法を学ぶ最初の一歩」を踏み出す方を対象に、実践上での多様なケースについてのさまざまな留意点が記してありますので、施設や地域だけでなく、家族や仲間での[思い出語り]にも参考になります。日本語の翻訳文も読みやすくお薦めです。

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『回想法 思い出話が老化をふせぐ』

 矢部久美子著 河出書房新社 1998年

・イギリスで回想法を学んだ筆者が、回想法実践者からの取材内容や文献を、雑誌的な構成で分かりやすくまとめてあります。「黒川由紀子さんに学ぶ」と題した「家族が行う<回想法>」はユニークで参考になります。また、黒川氏の例に加えて、様々な回想法の実践例が初心者にも分かりやすく紹介してあります。

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『老いの臨床心理』

 黒川由紀子偏 日本評論社 1998年

・臨床心理の専門家によって、高齢者の心理や高齢者との接し方が、分かりやすく書かれています。回想法だけでなく、コラージュ法、音楽療法の紹介もあり、いろいろな状況での対応例が参考になりました。

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『ケアの現場・地域で活用できる回想法実践事例集 つながりの場をつくる47の取り組み』

 編集代表:野村豊子 中央法規 2022年

・いろいろな地域で、さまざまな形で行われている回想法の事例が、実施者ご自身から詳しいレポートがなされております。介護保険制度が施行されて20年以上が経ち、回想法が地域の高齢者生活支援活動に活かされてきていることが分かります。

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*回想法の実施に関して(実際の回想法の紹介、実施する際のガイドブック、昭和の時代を知る際の参考になり、また道具としても使用可能な写真集とイラスト集、等です)

『介護施設やご家庭で、高齢な方とお話しするための「回想法 春夏秋冬の話題集」その楽しさと工夫の実践レポート』

 石川恭平&レミニス回想法の会 Amazon直販 2023年

・私たち(レミニス回想法の会)が、グループホームで行った回想法を、季節毎(春、夏、秋、冬、どの季節でも)に分け、各5回(計25のテーマ)を紹介しています。

・このブログのように、実際の回想法を見学しているようなイメージで読むことができ、学び始めてからの試行錯誤の様子も記しましたので、初めての方にお勧めです。

・また、既に回想法を実践されておられる方には、次の回想法のテーマ(話題)を考える時の参考にしていただけると思います。

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『Q&Aでわかる 回想法ハンドブック』(「よい聴き手」であり続けるために)』

 編集代表:野村豊子 編集:語りと回想法研究会/回想法・ライフレビュー研究会 中央法規 2011年

・回想法を実践するための基本事項が総括的にまとめてあります。Q&A形式なので読みやすく便利です。

・前作の『回想法ハンドブック Q&Aによる計画 スキル 効果評価』が2001年に発行された後、10年間の「日々の実践の積み重ねの中で新しい見解や成果」もまとめてあり、回想法の普及ぶりと進歩も良く分かります。回想法の全体像が分かる内容とボリュームです。(前作の内容で特に必要な項目は再録されています)

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『写真でみせる回想法』(付「生活写真集・回想の泉」)

 志村ゆず・鈴木正典編 弘文堂 平成16年

・昭和26年頃~49年頃の日常生活の写真集。見開きB4の大きさで見ることができます。 子供たちの遊び、学校の給食、井戸水での洗濯など、高齢な方々の育った時代の様子が写っていますので、思い出を誘うきっかけとして利用させていただいております。

・回想法の参加者の方は、視力の弱い方もおりますので、1枚の写真を2名の方が手に取って見ることができるように、枚数を多めにコピーして使わせていただいております。

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『昔遊び図鑑』

 坂本卓男 東京書籍株式会社 平成14年

・テレビもゲームも無かった時代の子供の頃の遊びが、イラストで紹介されています。  道路が子供の遊び場でもあり、家の近くに森や林があった時代は、子供たちが自分で道具を作り、創意工夫して遊んでいたことがよくわかります。

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*回想法について、より詳しく(回想法全般について解説があり、外国文献の紹介も多く、専門的な内容が記されております)

『回想法とライフレビュー その理論と技法』

 野村豊子著 中央法規 1998年 

・回想法について、その歴史と現状(発行当時の)、理論、手法を詳細に記してあります。事例紹介では、一般高齢者、痴呆性高齢者、特別養護老人ホーム入居者、等、多くの事例も記載されておりますので、より詳しく知りたいときのために座右においております。

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『総説 回想法とライフレビュー 時、人、地域をつなぎ、今に生かす』

 野村豊子著  中央法規 2023年 

 ・「回想法とライフレビュー」のタイトルは、上記と同じですが、「総説」とあるように、前著から20年の間の経緯を総括して記されており、外国の回想法の研究と進展についても詳しく記されております。「地域を結ぶ回想法ー地域共生・地域の活性化を目指して」の章では、宮古市と鎌倉市の例が新たに紹介されており、回想法の地域への拡がりが理解できます。

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『回想法 高齢者の心理療法』

 黒川由紀子著 誠信書房 2005年

・タサブイトルのとおり「高齢者の心理療法」としての視点から、回想法について詳しく記されており、実施例も多く記載されている専門書です。また、実施する側の心理状況が記されているページも多く、回想法を実施する際の考え方や感じ方に関しても勉強になりました。回想法にもいろいろな色合いのあることが分かります。

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『地域回想法ハンドブック 地域で実践する介護予防プログラム』

 監修 遠藤英俊 編集 NPOシルバー総合研究所 河出書房新社 2007年

・北名古屋市(旧 師勝町)で、地域で暮らす高齢者が人との交流をはかることで、認知症予防と閉じこもり予防を目的に、2002年に国のモデル事業としてスタートした「思い出ふれあい(回想法)事業」の総括レポートです。

・認知症を治療するためではなく「認知症でない高齢者(健康な高齢者)や地域で暮らす 高齢者への効果」を目的に実施され、現在も継続して地域全体の活動として取り組んでおり、昭和日常博物館や回想法キットの貸し出しについては、ネットでも知ることができます。

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*認知症に関して(グループホームで「思い出話の会」を実践しながら、認知症についても学んできた中で、特に感銘を受けた本です)

『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が日本人に伝えたい遺言』

 長谷川和夫  株式会社KADOKAWA 2019年

・筆者は、認知症の判定で広く使われている「長谷川スケール」の開発者。88歳の時にご自分が認知症であることを公(おおやけ)に。

・長く認知症治療にかかわり、「認知症」という呼称を決める際にも関わっていた専門医の先生が「ご自分が認 知症になられて、やっとわかった」ことを、読みやすい文章で記してあります。

・2000年に介護保険制度が施行され、「痴呆」という言葉が「認知症」と変わり、その後、どのような推移で今に至ったのかが、よく理解できました。

・そして、2019年の日本で、認知症とわかったとき、どのようなことを感じ、どのような生活になるのか、が丁寧に記されておりました。

・回想法に関しては、認知症ケアのセンター長を努める施設では、症状を和らげる研究のために「認知症」の部屋を作り、回想法を実践されたことが記されておりました。

・著者が文中で指摘されているように、1995年にクリスティーン・ボーデンさんが認知症と告知された時代(下記の『「私は誰になっていくの?」(アルツハイマー病者からみた世界)』)とは、別の世界のことのように感じました。(もちろん「認知症になった年齢」の違いが大きいと思いますが)

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『「私は誰になっていくの?」(アルツハイマー病者からみた世界)』

 クリスティーン・ボーデン著 株式会社クリエイツかもがわ 2003年

・介護する側ではなく、認知症患者自身が書いた認知症の本は希有、と話題に。

 1995年5月に認知症と宣告された日から、1998年に本書が出版されるまでの日々を綴ってあります。認知症という病に罹っても、人間性までも認知症と一括りにされたくない、という思いも切々と。日本語訳の前書きが書かれた年(2003年2月)に来日し、新幹線の中から「霞をたなびかせた富士山がすっくと立つ雄々しい姿」を目にした感動も。文章に病の気配は感じられず、認知症の方からみた周囲の世界がよく分かります。

・本書から6年後,『私はわたしになってゆく』を出版。6年間の心の軌跡が書名に。

・1995年に46才で認知症と診断されたクリスティーン・ボーデンさ、2019年に88才での長谷川和夫先生、その年代と年齢の違いが、どれほど大きなものか、両書を読んで理解できました。

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『認知症の人々が創造する世界』

 阿保順子著 岩波現代選書 2011年 

・認知症専門病棟で認知症患者の看護に携わり、不可解と思われる認知症の人達の行動にも、その人にとって必然的な理由があることを、旺盛な好奇心と詳細な観察から解き明かしていく。読了後、認知症の(そして高齢者の)方々への視点が変わりました。

 (写真は、2004年発行の「痴呆老人が創造する世界」、岩波現代新書はその再版)

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『「痴呆老人」は何を見ているか』

 大井玄著 新潮新書 2008年 

・この本は、臨床医学と介護の問題を出発点に、認知症について記されております。

 その考察は、時代背景、哲学、宗教、歴史、現代社会の諸相を網羅。認知症を考える時の教科書として、折に触れて読み返しています。何故アメリカに認知症が多く、日本でも急増しているのか、敬老の風習と認知症の関係、等々、難解なテーマも、読みやすい文章で、分かり易く記してあります。薄目の新書ですがその内容は超弩級。医療と介護の研究書と研究論文だけでなく、他分野の書籍も渉猟しその出典も詳細に記してありますので、更に深く知りたいときのガイドブックとしても秀逸です。

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<追記>

回想法関連の書籍は、上記の他にも沢山ありますが、書店の店頭には置かれていないことが多いようです。市町村の図書館にはあると思われますのでチェックしてください。

絶版の場合でも、アマゾン(または楽天)で購入可能なものもあります。

                                (2024年5月記)

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